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詩集「勿忘草を指にはさんで」
著 絵乃綴莉


花びら

  この想いを
  翼にしたら
  どうかしら?

  この想いを
  風に放したら
  どうかしら?

  この想いに
  光りをあてたら
  どうかしら?

  わたしは
  この想いを
  ひとひらの
花びらにして
  あなたの胸の中で
  響いていたい


一番星
 
 ある夜
 あなたは
 ひとつ、ひとつの言葉を
 天の空に静かに鏤めた

 月の光りが
 雲の隙間から
 洩れてくるような
 透き通った声で
 青い湖のように
 澄み切った瞳を
 月の光りに潤して

 出会いの至福を示し
 その歩みを讃えて
 そして
 延命を拒絶し
 深く感謝して
 ありがとうといって

 一番星が
 輝きはじめると
 いつも耳朶に蘇る
 あの夜の
 あなたの
 言の葉が

空虚
    
時は
  すまし顔で
  スーッと通り過ぎて
      ゆきました
    
    
  空虚なわたしには
  何の心もなく
    
    
  時は
  ただ
  黙って去りました