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著   junc




*―― ゴミの日 ――

すがりつくものが見当たらなくて
すがりつくのはやめた

行き場を失った不安は
袋に詰めてゴミの日に出した

ころころと転がるような時の流れに
僕は身を任せてみる

窮地に追い込まれていることも
身動きが取れなくなっていくことも
傷を増やすだけの日常も
悩んでいたって変わりはしないから

それはとりあえず置いておいて
ころころと転がるような時の流れに
僕は身を任せてみる

そしたら案外 生きていられる
何もかも変わらないけれど
現実は早々変えられないけれど
いつかきっと…なんていう
ちょっとした期待や希望が
むくむくと育ったりしてくるものだから
それはゴミの日には出さないで
大切に置いておく
使える時がくるまで ずっと


*―― 
梅ナミダ ――

ぷっくりと
膨らんだ梅のつぼみ
ポタポタと
降り注いでくる雨のしずく

その二つが重なりあう時
梅は静かにナミダを流す

つぼみは木全体に散らばり
みな 雨のしずくを一度吸い込み
限界を超えて溢れだす

まるでそれは
梅のつぼみであることより
雨のしずくでいたいかのように

まるでそれは
密かにしずくになりすまして
どこかへ行こうとしているかのように

つぼみの望みはそれでも叶わず
いつまでもただ ナミダを流す

*―― 
自信をもって ――

何を焦っているのだろう
何を欲しがっているのだろう
こんなに狭い日本の中で

ただただ勉強して
あくせく働いて
その先に何があるというのだろう
全ての人が欲しがっているものが
そこにあるというのだろうか

行きつく先に戸惑いながら
なおも焦りながら
走り続けている自分は
一体何なのだろう

何を急いでいるのだろう
何を戸惑っているのだろう
こんなに狭い日本の中で
もっとゆっくり もっとのんびり
今の自分をみつめてみよう
 
何も焦ることはない
何も急ぐことはない
何も戸惑うことはない

時間単位の人生なんて
あるハズはないのだから