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著  ミチタリル

* ―― 
こころの翼 ――

わたしには こころの翼があります

あなたが呼びかけてくれるのなら
いつでもどこにでも飛んで行きます。
あなたの溜息に ちょっぴり安堵を
あなたの不安に 少しだけ喜びをと
 
わたしのこころには 翼があります
いつでもどこにでも 飛んで行きます
だから 思い出した時に声をかけてください

ただ……
あなたのこころにも翼がありますね
待っている人が きっと います……

* ―― 
回転目馬 ――

その娘は 僕の初恋の相手でございました
真夏の遊園地は 何処も彼処も眩しくて
小走りにお目当て目指す 恋人達の夢の国
娘の手を いつ握ろかと図る僕
そよぐ風が ほてった身体に心地いよい

ふたりが足をとめた其先には回転木馬
大きな円盤に たくさんの夢物語括られて
目と目で交わした 初めての合図に
ふたりは コクリと頷いたのです
僕は跳ね馬に跨りまして
見れば娘 僕よりやや後ろで影踏まじと
愛くるしい子鹿に斜め座りでございます
ペア馬車は 初々しき純愛心とやらが拒絶しました

さて 回転木馬は滑らかに回り始めます
時折僕は振り向いて 娘に硬い笑みを送ります
付かず離れずとは申しますが
手の届かぬ距離 もどかしや
同じ方向進もうと
手の届かぬ距離 もどかしや

円やかな遠心力に酔いながら
あれやこれや 想い巡らせていたものです
それもつまりは 堂々巡りかと気付くも遅く
帰り路じゃ 他愛のない会話で
思い出といったら 湿た夏風にのって
時折漂った甘匂だけでしょうか…
その娘の現在なら 一切存じませぬ


* ―― 
ひとこと ――

「ありがとう」
その一言が頬を緩ませ

「大好きだよ」
その一言でココロを溶かす

「愛している…」
その一言はなかなか言えない

ココロって
素直なようで シャイなんだ